日本茶の歴史は抹茶から。
今回は京都宇治の地で300年以上続く丸久小山園をおたずねし、
絶品の抹茶ができるまで、そして、
そこに込められた こだわりをご紹介します。
一枚の看板、それは信頼の証
先春園本店には、今も大切に受け継がれている、一枚の看板があります。その看板は船底を使ってつくられたもので、そこには日本における煎茶道の開祖とされる、隠元和尚の言葉が刻まれています。これは元禄年間(1688〜1704年)から続く、宇治茶の老舗製造元、丸久小山園が、おつき合いの長い得意先だけに贈られたもので、今では先春園本店しか所有する店はないのだとか。その取引は、先春園本店の先々代、現在の当主の祖父の時代に始まりました。阪神間で最初に、丸久小山園のお茶を取り扱ったのが、先春園本店だったのです。 先代も若い頃は住みこみで修行に励んだという、老舗のお茶づくりを今回じっくりと拝見させていただきました。
「品質本位の茶づくり」が老舗の味を守る
長い歴史を誇る丸久小山園は、栽培〜販売まで一貫して手がけ、香りや味、風味に加え、安全性も徹底して管理されています。
その実力は『全国茶品評会』で農林水産大臣賞を30回も受賞するほど。日本一の茶審査技術者を決める『全国茶審査技術競技大会』では、史上初の満点優勝の快挙を果たしたことも。また天皇、皇后両陛下が伊勢神宮御参拝の折には、神宮司庁より御下命をいただいてお茶を献上するなど、品質を追求し続ける姿勢は、時を超えて多くの人を魅了してやみません。
丸久小山園の抹茶は、宇治地方独特の製法でつくられます。
それは日よけに天然の葦や藁を使用し、茶園の天井や横を覆い、天候により日光を調整しながら、ゆっくりと茶木を育ててゆくというもの。新芽をほんの少しの光で育てることで、色鮮やかで渋みの少ない美味しいお茶になります。一番良い土壌に、こだわり抜いた有機肥料を与え、次の年の品質のために新芽の一番茶だけ手摘みする。昔から変わらぬ、手間ひまかけた栽培方法を守ること。それが老舗の味を産むのです。
昔ながらの技と最先端の品質管理
摘まれた生葉は、最新の機能をもつ工場に運ばれ、すぐに蒸気で蒸されます。その後、炉で乾燥されたものが「碾茶(てんちゃ)の荒茶」として低温で貯蔵され、必要に応じて蔵から出され、大きさを揃えながら、良質の葉だけを選びます。仕上げた碾茶は、外観、味、香りなどから小山元治園主自ら審査し、品質や特徴を見極ていきます。常に安定した味を求められ、それに応えるために栽培・製茶の技術を磨く。これこそ老舗の矜持といえるでしょう。
出荷する直前に、室温20℃・湿度40%以下の状態が保たれたクリーンルームで石臼によって挽かれ、最上級の抹茶が製造されていきます。覆いをかけ、手間ひまかけて大切に育てた茶の新芽だけを摘んで、何回も選別して丹念に石臼で挽く。ひとつの石臼で挽ける量は1時間に40gほど。抹茶は現代における最高の嗜好品なのかもしれません。
丸久小山園には「又玄(ゆうげん)」という銘柄があります。これは「奥深い上にも、なお奥深い道」という意味で、自社製品への責任と誇りがうかがえます。
抹茶をもっと楽しむために
丹精込めた上質の抹茶を、気軽に楽しめるお店、丸久小山園西洞院通店・茶房「元庵」では、ショップに併設された茶房で、宇治茶と季節の生菓子や抹茶のロールケーキなどが楽しめます。店内には京都らしい坪庭や茶室があり、季節を感じる茶器を使うなど、随所にこだわりが感じられます。
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(2015年12月11日)
今回訪れたのは、こちら。 |
(株)丸久小山園 槇島工場 住所:京都府宇治市槇島町中川原172-4 電話:0774-25-0505 営業時間:9:00~17:00 定休日:日曜日、祝日、土曜不定休 槇島工場では、予約にて抹茶工場の見学を受け付けています。 www.marukyu-koyamaen.co.jp/ |